Organic 100人の生き方

第3回 | 海老澤 哲也

第3回 |  海老澤 哲也

自分と家族の暮らしが見える大地で働き、
六次産業として醸していく。

海老澤哲也は、犬山農芸の職業訓練校で発酵による土壌作りや食品加工などの講師をしながら、米、豆、小麦を主に作り、それらを自ら醸して海老澤糀店を営んでいる。また、塩糀や味噌作りなど、発酵食品のワークショップも積極的に開催。原料となる農作物を作り、それを自ら加工して製品化し、販売まで手がける。このような経営形態は六次産業と呼ばれ、作り手の独自性や地域の特色を活かせることで近年注目されている。「練さんとは、犬山で畑をすることになってやって来たとき、偶然隣の畑を耕していて出会ったんです。練さんはちょうど犬山に越して来たところで、でもいつもいろんなことしてニコニコして本当に楽しそうで。この出会いは本当に大きかった」。海老澤は1年半ほど前に立ち上げた海老澤糀店を六次産業化して軌道に乗せるべく、日々まい進の最中だ。海老澤にとってオーガニックは、やはり自分の作るものの安心やおいしさへのこだわりであり、同時に、自分の仕事のプロセスや結果を家族との暮らしの中でしみじみと感じられる働き方にも通じるという。

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頂上の見えない山をひたすら登り続け、燃え尽きてしまったサラリーマン時代。

海老澤は高校卒業後、斬新な経営を展開する葬儀社にビジネスチャンスを感じて入社。トップセールスを誇る敏腕営業マンとして活躍していた。まだ駆け出しの会社は飛躍的に業績を伸ばし、次々と新規開拓を仕掛けていく。営業成績を認められた海老澤は新たに式場をオープンする地域での新規会員獲得を次々と任され、県内各地を飛び回る忙しい生活を送った。結婚してこどもが生まれ、家族が増えていく中でも、日々の忙しさに自分や家族の生活にまで目を向ける時間がとれない。仕事でも、目標とする新規会員を獲得すると新たな会員獲得地域への異動が決まる。「せっかく出会えたお客様に自分の手で何もできないまま次の地域に移らなきゃならなくて、虚しさを感じることもありました」。その後、業績不振の式場の立て直しを任されたが、いくら頑張っても思うように業績が回復しなかった。「激務による疲れや対人関係のストレスが限界に達してしまって、思い切って会社を辞めることにしたんです」。

自分と家族の生活を見つめ直し、米作りから始めた、自分で作る暮らし。

会社を辞め、海老澤はそれまでの忙しかった時間を取り戻すかのように、いろんな場所へ旅に出、家族と共に過ごし、近隣に住む人たちとの関わりも深めていった。「こどもの皮膚が弱かったこともあり、前から奥さんが食べものにはかなり気をつけてくれていました。僕より先にオーガニックを取り入れてましたね。僕はそれまでへぇーって少し斜めから見てきたけど、じゃあ自分でやってみようかなって。自分が食べるものは自分で作ろう、と。まずは主食である米作りから始めたんです」。サラリーマン時代の貯えを元に営業で培ったフットワークの軽さや人付き合いの良さで、多方面に人脈を広げながら、自分たちが安心して食べられるオーガニックな米作りや畑のノウハウを集めて実践していった。「自分で何か作ることも好きだったので、安心して使える堆肥作りをしたり、とれた米を発酵させてみたりしていました」。そして、縁あって犬山の地に畑を借りることになったのだ。

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自分がやりたいことをお金につなげる。自分で作る暮らしから六次産業化への挑戦。

「米作り、畑仕事に没頭しながらも、その先について考えていました。貯えも無限にあるわけじゃないし。しばらく農業給付金をもらいながらやっていましたが、本当に自分がやりたいことをお金につなげていくにはどうしたらいいかを考えるようになりました」。犬山に畑を借り、佐藤練と出会った海老澤は、犬山農芸でもさまざまな人とつながり、ユニークな試みをしながら自分自身の働き方や暮らし方を模索。土を耕して米、豆、小麦を作り、それらを発酵させて糀や味噌、醤油を作り、商品として販売するやり方に行き着いた。同時に、自分自身のノウハウや技術を人に伝えたり、自分で作れるプロの人材を育てたいとも考えている。「海老澤糀店を六次産業化して、自分の本当にやりたいことで食べていけるように、仕事と暮らしを作っていきたいですね」。

サラリーマンを辞め、米作りや畑仕事を始めてから、海老澤にとってのお金のイメージが変化したという。「以前はお金に対して自分でバリアを張っていて。お金のせいでいろんなことがおかしくなるんだって思っていた。だけど、今はありがとうの気持ちがお金として自分のところへ返ってきてるんだと感じられるようになりました」。自分と家族の生活を見つめ直し、始めた自分で作る暮らし。そしてそれを自分の仕事として、六次産業化を目指す海老澤糀店。「今の仕事は、振り返れば、自分のやったことがそこに全て現れていて。米や畑、作っている糀や味噌たちももちろんそうだし、ワークショップでも来てくれた人が『こんなに美味しいのができました~!』ってSNSでシェアしてくれたり、そういうのがすごくうれしいんです」。自分が働いたプロセスや結果を日々の暮らしの中でしみじみと感じながら、海老澤はオーガニックな六次産業を醸していく。

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